借金の時効成立条件と注意点まとめ【これだけ読めばOK】

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名村法律事務所

借金は基本的に返さなければなりませんが、お互いに借金の存在を忘れ、後になって問題なるケースがあります。

そのようなケースでは「時効」という選択肢があり、正当な方法とはいえないかもしれませんが、時効を使うことによって借主は支払義務から解放される場合があります。

ただし時効を成立させるには様々な法律上の条件があるため、時効を成立させるための条件とその注意点について確認していきましょう。

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知っておくべき借金と時効の関係について

借金の時効の具体的な成立条件を学ぶ前に、まずは時効に関する基本的な知識を学びましょう。時効には「消滅時効」「取得時効」の2種類があります。

消滅時効とは

消滅時効とは、「一定期間、権利が行使されなかった場合にその権利の消滅が認められる時効」をいいます。

【例】X氏は消費者金融から100万円の借金をしました。お金を借りたのが10年前だった場合、消費者金融から何も連絡がない場合には、X氏は時効による借金の消滅を主張できるようになります。

取得時効とは

取得時効とは「一定期間所有していれば、他人のものであっても所有権を取得できる時効」をいいます。

【例】本来はP氏のものである土地にQ氏は誰のものか知らずに土地に家を建て、20年間住んだ場合に20年後に突然P氏が現れたとしてもその土地はQ氏のものになってしまいます。

借金の場合には、貸主の権利が行使されなかったことによる支払義務の消滅が論点となるため「一定期間、権利が行使されなかった場合にその権利の消滅が認められる時効」である消滅時効が適用されます。

借金の消滅時効が成立するために必要な2つの要件

では次に、借金の消滅時効が成立するための条件を見ていきましょう。借金の消滅時効が成立するためには以下の2つの要件を満たす必要があります。

①返済しない状態が法的に定められた期間以上続いていること(時効成立の時間的要件)

②貸主に対して、消滅時効の制度を利用することを伝えること(時効成立の意思表示)

1つ目の時間的な要件は、「どのタイミングから何年たてば時効が成立するのか」が論点となります。2つ目の意思表示については、「どのように意思表示をすれば、法的に認められるのか」が論点となります。

それぞれの要件についても細かい条件があるため、少し難しいかも知れませんがしっかりと確認していきましょう。

特に時効は成立条件が細かく設定されている分、事実確認のところで問題となるケースがあります。今のうちにしっかりとポイントを押さえておくことで、有利に物事を進めることができるようになるでしょう。

消滅時効が成立するための第一の条件│時効が成立するまでの期間計算

まずは、消滅時効の要件の第一の条件である、「時効が成立するまでの期間計算」について見ていきましょう。時効が成立するまでの期間の計算にあたって抑えなければならないポイントは、以下の2つがあります。

①借入先が個人なのか法人なのか(相手先によって時効成立までの期間が変わる)

②借金の返済期日は定められているのか(返済期日が期間計算のスタート地点になるため)

それぞれについて見ていきましょう。

借入先が個人の場合は10年、法人の場合は5年

借入先によって、時効成立までにかかる時間が異なります。借入先を大別すると、「個人」と「法人」に分けることができます。それぞれを定義すると以下になります。

個人・・・知人・友人や家族

法人・・・銀行、消費者金融

個人と法人によって適用される時効の法律が異なり、個人の場合は民法が、法人の場合には商法が適用されます。

民法第167条には「債権は、10年間行使しないと消滅する」とあります。よって個人間の借金の場合は10年で、消滅時効の期間要件が満たされます。

一方で商法第522条には「商行為によって生じた債権は、(中略)5年間行使しないときは、時効によって消滅する」とあります。よって、法人に対する借金は5年で消滅時効の期間要件が満たされます。

そのほかにも借金の内容によって時効の期間が異なるため、下記の表を参考にしてみてください。

■時効の期間一覧

6ヶ月 ・小切手債権
1年 ・ホテル、飲食店、映画館、野球場、レンタカー、レンタルビデオといった娯楽場でかかった料金
2年 ・学校や塾に対する未払授業代など
・給料や賞与(ただし退職金は5年)
3年 ・交通事故等の損害賠償請求など不法行為に関する債務
5年 ・法人対する債務。法人間の取引によって生じた債権のほか、地代、NHK受信料なども含まれる
10年 ・個人間の債権および確定判決など民法上で発生した債権

借金の返済期日は定められているのか

次に、どの時点から時効の計算を始めればよいか見ていきましょう。時効成立の期間計算は「返済期日」を軸に行います。

債務には返済期日が定められているものとそうでないもの、また返済期日が諸々の理由により不明なものがあります。それぞれのケースについて、どこを期間計算のスタート地点とするのか見ていきましょう。

①返済期日が明確に定められている債務

返済期日が明確に定められている債務

返済期日が明確に定められている債務の場合、最後に返済をしなかった期日の「翌日」が起算日となります。

一度も返済していない場合には、1回目の返済期日の翌日が期間計算のスタート地点となります。すべてのケースに言えることですが、返済期日の「翌日」がスタートとなることには十分に注意しましょう。

②返済期日が定められていない債務

返済期日が定められていない債務

返済期日が明確に定められていない債務の場合は、借入契約日の「翌日」が起算日となります。※ただし、一度でも返済をしている場合は、最後の返済日の翌日を起算日とします。

③返済期日がわからない債務

返済期日がわからない債務

返済期日がわからない債務については、対応がケースバイケースとなるため、自分で判断せずに弁護士といった専門家に相談しましょう。具体例では、親から相続を受けた場合の計算を示しています。

1つめの条件である、時効の期間計算について学びました。特にどの時点を計算のスタート地点とするかは事実確認が重要となるため、借入れた際の書類や貸主とやり取りした記録などはちゃんと整理しておきましょう。

消滅時効が成立する第二の条件│時効制度を利用することを貸主に伝える(時効の援用)

次は二つ目の条件である、「貸主へ時効制度をしたことを伝える」という点について見ていきましょう。

時効を成立させるためには、期間の条件を満たすだけでは足りません。借主は、貸主に対して「時効が成立しているので、借金の返済義務がなくなりました」という意思表示をすることによって、法的も消滅時効が認められることとなります。

この意思表示のことを「時効の援用(じこうのえんよう)」といいます。時効の援用の方法には決まりはなく、口頭で伝えた場合でも効力はあります。

ただし一般的には、確定日付が証明できる、「内容証明郵便」で行われます。書類は郵便窓口で手に入れることもでき、書き方も窓口で教えてくれます。

専門家に記載を依頼することもできますが、その分お金はかかってしまうため、内容証明程度であれば自分で行うようにしましょう。

要注意!知らないと落とし穴になる、貸主が借金の消滅時効を中断させる方法

消滅時効を成立させるための2つの要件について詳しく確認してきましたが、知らないうちに貸したお金がなくなってしまう貸主にとっては踏んだり蹴ったりな制度といえます。

そのため、貸主が救済されるような制度が別に定められており、消滅時効を利用する借主としては必ず知っておく必要があります。

その制度を「時効の中断」といい、進行中の時効がある事実によって、その効力を失ってしまうことをいいます。つまり、時効が中断してしまうと、また1から時効成立までの期間を計算する必要があります。

時効の中断には3つの方法があるため、それぞれについて確認しましょう。

借金時効中断の方法その1:請求

貸主は借主に対して請求を行うことで、時効の中断を行うことができます。請求には裁判上の請求と裁判外の請求に分けることができます。

裁判上の請求

裁判上の請求には、「訴訟の提起」「調停申し立て」「即決和解の申立て」「支払催促」の4つがあります。

「訴訟の提起」

訴訟の提起とは、借金返済の遅延に関し貸主が借主を裁判所で訴えることを指します。時効の中断は訴状が裁判所に提出された時点で有効となります。

訴訟の提出により即時効の中断となるものの、訴訟には時間と費用がかかるため、一般的な選択肢ではなく、「調停申し立て」「即決和解の申立て」「支払催促」となるケースがほとんどです。

「調停の申し立て」

調停とは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、選任された調停員が間に入って話し合いで合意を目指す手続きをいいます。この調停申込によって時効の中断が有効となります。

「即決和解の申立て」

即決和解とは、提訴の前に裁判外で和解のための話し合いが行われる手続きを言います。通常の和解は裁判所で行われるため、裁判外で行うという点に特徴があります。

裁判所を通さないため、通常の和解よりも費用がかかりません。

即決和解が成立すれば時効の中断とすることはできますが、和解が成立しなかった場合には、1カ月以内に訴状の提起を行わないと時効の中断の効力は失われてしまうことに注意しましょう。

「支払催促」

支払催促とは貸主が、契約書といった証拠品を裁判所に持ち込んで簡易裁判所に申し立てることをいいます。支払い催促は少々複雑なので注意してください。

支払い催促の申立てが裁判所で認められると貸主に代わり借主に対して支払い命令を出します。この命令は書面にて伝達されますが、借主がこの書面を受け取った時点で「一時的に」時効が中断します。

借主はこの書面を受け取った日から2週間以内に異議申立てを行うことができます。この異議申し立てが行われずに、かつ貸主が30日以内に「仮執行宣言の申立て」を行った場合に「完全に」時効は中断されます。

裁判外の請求

貸主が借主に対して、借金返済を請求する旨を記載した内容証明郵便を送った場合、一時的に6カ月間だけ時効が中断します。ただし、借主のほうから何も連絡がない場合は、6カ月に時効の進行が再開されます。

借金時効中断の方法その2: 債務の承認

債務の承認とは、支払への誓約書へのサインなど借主側から債務の存在を認めることを指します。

また1円でも借金返済をした場合は、サインなど同様に債務の存在を認めることになります。債務の承認が行われると時効は中断します。

ここで注意をしなければならないのは、時効の期間要件を見てしていても、その後に返済をしてしまった場合は時効が無効となります。

借金時効中断の方法その3: 差し押さえ

訴訟や支払い催促により裁判所が貸主に対して強制執行の許可を出した場合には、国の命令である以上当然に、時効を中断させることができます。

借金の時効成立までの手続きまとめと、時効を使う場合のリスク

時効成立までの流れとその注意点に見ていきました。最後に、時効成立までの流れのおさらいと時効制度を使うリスクについて再確認します。

借金の時効成立までの流れ

時効成立までの手続きをまとめると、以下のようになります。

①時効の期間が満了する

②時効の援用を行う

③貸主が時効援用の通知を受け取る

④時効が成立する。

時効は、成立まで最高で10年もかかることから、非常にリスクの高い選択肢といます。最後に時効を使うにあたってのリスクを説明します。

借金時効のリスクその1│時効が完了するまで、利息は増え続ける

借金に利息が付いていた場合、時効が成立するまでの間も利息は増え続けます。時効が実現すれば返済義務はなくなりますが、仮に失敗した場合に残るのは元本だけでなくダルマ式に増えた利息も残ることになります。

借金時効のリスクその2│大きなストレスを抱えることになる

借金を返済しないことにより、時効が成立するまでは借金の取り立てなど常に意識をする必要があります。また、開き直ってしまった方は違うのかもしれませんが、普通の方であれば罪悪感も生まれるため、そのことが大きなストレスを生むことになります。

借金時効のリスクその3│クレジットカードでの時効になると、5年間はローンを組むことができなくなる

クレジットカードで未払情報あがると、信用機関を通じて悪評価を受けることになります。そのため、将来住宅ローンなどを組む際にも、自己破産の影響がでることになります。

上記のリスク以外にも様々なリスクがあるでしょう。長い期間こういったリスクを抱える覚悟で時効という選択肢を検討してください。

時効について色々とみていきましたが、大原則として借金は返済しなければならないものです。ただ様々なケースがあるので、時効を検討する際は手続およびリスクについて理解し、正しい選択を行いましょう。